「今後の住宅の持続性を考える上での実践的な改修方法として、優れた批評性を提示している」という評価を頂きました。
日本建築学会東北支部
講評
作品賞【盛岡の家】
地方都市に立地する築 80 年を超える老朽化した戸建て住宅を次世代に住み継ぐためのリノベーションであ る。主なアプローチは、外皮減築、断熱補強、耐震補強の3つ。減築は室内への日射の確保するともに、軒 下空間に中間領域を創出することで外部空間とのながりを豊かにしている。外壁の高断熱化は、吹き抜け句 を含む開放的な室内の平面計画を実現している。床レベルを450mm下げることで、外部への眺望の確保と室 内空間に広がりをもたらしている。耐震補強もジャッキアップをせずに、基礎の部分補強を行う構法を採用 し束基礎から布基礎に変更している。また、サッシなどの部材についても腐食した部材を中心に最小限の交 換にとどめている。それぞれの手法に共通しているのは、現状の建物の価値を丁寧に読み取りながら、次な るリノベーションを視野に入れた計画とするために、部材、接合方法、設備などを汎用性の高い方法を組み 合わせることで、住まいとしての持続性を創り出している。今後の住宅の持続性を考える上での実践的な改修方法として、優れた批評性を提示している。以上により東北建築作品賞に推薦いたします。
総評
本年度は、小規模建築部門、一般建築部門を通じて用途及び様々なアプローチのある作品に応募いただきました。選考を経て選定された作品賞 3 点は、減築リノベーションによる住宅の持続性を提示した 「盛岡の家」CLT と集成材によるダイナミックな空間を創出した「SYNEGIC office」、縦ログ構法を駆使 した地域の豊かな情報拠点の計画である「きとね」、特別賞の 2 作品も地域との対話を重ねた保育所づくり と、移設と既存住宅の形式を踏まえた再構築したオフィスでした。作品の評価軸は多様ですが、本年度の受 賞作に共通するのは、地域や環境のコンテクストの丁寧な読み取りとそれらを具体化するための手法、特に 木造を中心とする実践的な技術力だったといえます。これらの受賞作が今後の東北の建築文化の一つの契機となればと思います。