top of page
Ikehara Architect & Associates,池原靖史,池原靖史建築設計事務所,株式会社池原靖史建築設計事務所

落合の居拠

House in Ochiai

所在地 東京都新宿区

主用途 専用住宅

設計

 池原靖史建築設計事務所/担当 池原靖史

 トミ設計室/担当 冨山正幸


構造設計

 三野建築構造研究所/担当 三野裕太


設備

 池原靖史建築設計事務所 担当/池原靖史


環境実測・検証

 深和佑太(日本工業大学)


施工

 小川共立建設(株) 担当/合田太郎 合田邦雄


構造 RC造

階数 3階(地上2階 地下1階)

敷地面積 55.80 ㎡

建築面積 37.86 ㎡

延床面積 100.73 ㎡


竣工 2024年1月


写真 ©️関拓弥  



Title: House in Ochiai

Location: Shinjuku-ku, Tokyo, Japan

Principal use: House


Architects:

 Ikehara Architect & Associates / Yasushi Ikehara 

 Tomi Design House / Masayuki Tomiyama

Structure engineering:

 Mino Structural Engineers / Yuta Mino

Construction:

 Ogawa Kyoritsu Construction / Taro Goda, Kunio Goda 


Structure: exposed concrete, steel, wood

Scale: 3F

Site Area: 55.80 ㎡

Building Area: 37.86 ㎡

Total floor area: 100.73 ㎡


Completion: 2024


Photograph: ©️Takuya Seki

極細のコンクリート格子梁に棲む

敷地は東京都新宿区、古くからつづく住宅地の一画に位置する。クライアントとその父、

そして彼女たちの愛犬のための住宅である。もとよりこの場所に住んでいたクライアント家族の要望は、

「思い入れのあるこの土地に、可能な最大の床面積をもつバリアフリーの住宅を新築したい」というものだった。


計画にあたっては、2階建ての住宅を想定して敷かれた道路斜線と高度斜線を躱すように屋根ラインを、

施工的に根切りと土留めが可能な敷地境界線ギリギリの位置に外壁ラインを、

地下の常水面の直上に基礎底版ラインを設定し、地階を含む3層ぶんの容積を確保した。

土と接する部分の防水には、省スペースで施工性の高い外断熱+コンクリート躯体防水の構法を採用し、

地上部分も連続的に外断熱の鉄筋コンクリートで躯体をつくることで、室内スペースの有効寸法を最大化している。

こうして、タイトな敷地条件と設計与件から半ば自動的に建物の外殻が導かれた。


立ち現れたこの切実なるシルエットを前に、設計者として「アウトライン」を規定することからは

できる限り遠ざかりたいと考えた。


RCの扁平柱で壁内のRC梁を支持する構造形式として、外壁の開口部のない部分に合理的に構造要素を

配置しながら、柱と梁に囲まれた部分に増打ちを見込むことで、室内側を凹凸のない打放し面とした。

同時にコンクリート躯体の外周部、地面より低い位置にシャンプーハット形状のスラブを設け、

これを水平構面として評価することで、室内に水平構面がほとんど存在しない特殊な構造体をつくった。


そして伽藍堂の外殻に対して、薄い木床版を支持するという最低限のはたらきしか持たない、

か細くしかし物質的な確かさを讃えた鉄筋コンクリートの格子梁を、空間を張るための純粋な「道具」として配した。

梁下1800mmという寸法的緊張感を伴って、生活スペースの上下に幅100mm×せい450mmの細い梁のグリッドが横たわる。

その状況が、一般的な機能性とは遠く離れたところでこの場所を人が棲むための「家」たらしめている。


一方で、普通型枠化粧打放しの粗いテクスチャの内壁は、増打ち部分に輻射式冷暖房の温水パイプが

埋め込まれており、全館空調システムにおける蓄熱体としての機能を担っている。

役割を与えられる毎に建物外皮は「性能」という名の背景に沈み、空間を彩る「道具」の存在をより際立たせている。


信頼に足る「道具」のもとに人が集い、暮らす。古くも新しい住まいの原理が、確かにここにある。

© 2025 Ikehara Architect & Associates  All Rights Reserved.

Photo by Takeshi Yamagishi / Takuya Seki

bottom of page