top of page
Ikehara Architect & Associates,池原靖史,池原靖史建築設計事務所,株式会社池原靖史建築設計事務所

つくばの居拠

House in Tsukuba

所在地 茨城県つくば市

主用途 専用住宅

設計

 池原靖史建築設計事務所/担当 池原靖史

 トミ設計室/担当 冨山正幸


構造設計

 三野建築構造研究所/担当 三野裕太


設備

 池原靖史建築設計事務所 担当/池原靖史


不動産

 まちアーキ不動産 担当/藤谷幹(元・創造系不動産


施工

 小川共立建設(株) 担当/合田吉郎 合田邦雄


構造 木造(一部鉄骨補強)

階数 2階

敷地面積 234.3 ㎡

建築面積 61.73 ㎡

延床面積 99.29 ㎡


竣工 2024年5月


写真 ©️関拓弥  



Title: House in Tsukuba 

Location: Tsukuba-shi, Ibaraki, Japan

Principal use:House


Architects:

 Ikehara Architect & Associates / Yasushi Ikehara 

 Tomi Design House / Masayuki Tomiyama

Structure engineering:

 Mino Structural Engineers / Yuta Mino

Real estate :

 MACHI ARCHI ESTATE / Motoki Fujitani

 Souzou-kei Real Estate / Motoki Fujitani(Ex-staff)

Construction:

 Ogawa Kyoritsu Construction / Taro Goda, Kunio Goda 


Structure: Wood, Steel

Scale: 2F

Site Area: 234.3 ㎡

Building Area: 61.73 ㎡

Total floor area: 99.29 ㎡


Completion: 2024


Photograph: ©️Takuya Seki

「ななめ」を張る

 茨城県つくば市、市街化調整区域に指定されたエリアに建つ新築住宅の計画。地目が山林の変形敷地には北側に下る崖があり、その斜面には敷地全体を覆い隠すように雑木が生い茂っていた。建主らと共に埼玉県の市街地エリアから土地探しをはじめて丁度半年ほど経った頃、流れ流れてようやくこの土地に出会ったのだった。土地の絶対的な広さ、近隣建物との離隔、市街地と一定距離を保って落ち着いた場所をつくれそうなこと。確かに建主からの全ての要望にピタリと合致した。リモートワークという働き方が一般化したあとの世界を合理的に生きようとする建主が下した決断は、現代におけるひとつのフロンティアを示唆しているように思われた。

 計画された学園都市のイメージが強いつくばにあって少々意外ではあったが、敷地には飼い慣らされていない草木たちの力強さに溢れた地面が広がっていた。そのポテンシャルを最大限に享受するため、安全性を担保した上で建築全体を崖面に可能な限り近付けることを決めた。地表面から比較的浅いレベルに安定した地山が存在したため、L型擁壁の天端にコンクリートスラブが載った断面形状の高基礎を崖に沿って配し、フラットなところのない敷地に生活の起点となる水平な人工地盤を浮かべた。

 その上に2間×8間の細長い平面形状をもった在来木造の2階建ボリュームを載せているが、このとき、南側1間には明確な「機能」をもったスペースをゾーニングし、一方北側1間には「その他」にあたる場所たちを並べている。

 最後に、北側の崖と雑木に直接対峙してギリギリの最前線で外部の過剰な情報量を捌き、調停するための道具を用意した。壁と見做すには寝ているようで、屋根にしては立っている。従ってここでは仮に「ななめ」と呼ぶ大きな平板が木造軸組に取り付いている。 

 「ななめ」は、建物北面を覆うことで最低限のプライバシーを確保すると共に、2階南面に設けたハイサイド開口から簀子状の床を通って崖の下へと続く断面方向の抜けを生み出し、また穿たれた4箇所の孔によってフレーミングされた北面の雑木とその隙間越しに見える様々と改めて出会い直すためにある。規則正しくリズミカルに続く柱梁のグリッドはさしずめ、「ななめ」を経由して建築内部に流れ込んでくる情報の揺らぎと、刻一刻と変化していく景色の機微を測定するための目盛りとなるだろう。「ななめ」の下に張られたひとつながりの空間は、内外問わず住まいにおける「機能」の外側にある「その他」すべてを包含する広がりである。

 この場所から拓かれていく新しい生活の姿とその成熟の行方に注視したい。 (池原靖史)


© 2025 Ikehara Architect & Associates  All Rights Reserved.

Photo by Takeshi Yamagishi / Takuya Seki

bottom of page