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Ikehara Architect & Associates,池原靖史,池原靖史建築設計事務所,株式会社池原靖史建築設計事務所

篠風の居拠

House in Shinokaze

所在地 愛知県名古屋市

主用途 専用住宅

設計

 池原靖史建築設計事務所/担当 池原靖史

 トミ設計室/担当 冨山正幸


構造設計

 三野建築構造研究所/担当 三野裕太


施工

 箱屋 担当/松本繁雄


構造 1階木 造   地下 RC造

階数 2階(地上1階 地下1階)

敷地面積 186.96 ㎡

建築面積  74.52 ㎡

延床面積 112.74 ㎡


竣工 2024年 5月


写真 ©️関拓弥  



Title: House in Shinokaze

Location: Nagoya-shi, Aichi, Japan

Principal use:House


Architects:

 Ikehara Architect & Associates / Yasushi Ikehara 

 Tomi Design House / Masayuki Tomiyama


Structure engineering:

 Mino Structural Engineers / Yuta Mino


Construction:

 Hacoya / Shigeo Matumoto


Structure: Wood, RC

Scale: 2F

Site Area: 186.96 ㎡

Building Area: 74.52 ㎡

Total floor area: 112.74 ㎡


Completion: 2024


Photograph: ©️Takuya Seki

2つの「外構」と共にあるコンパクトな平屋

愛知県名古屋市、山の手の斜面地に広がる住宅街の一角に建つ新築住宅。計画地は「ひな壇の土地」とも呼ばれる、敷地内に2メートル弱の高低差を有する造成地である。設計に着手した直後、既存解体が終わって上下の宅盤がひとつに繋がることで大きな斜面となった敷地をクライアントと共に眺める機会を得た。まだ「庭」とも呼べない、未舗装の土の地面が続く風景だったが、「この広がりを享受できるのであれば居住スペースは最小限でも問題がなさそうだ。」という地面に対する信頼感を共有することができた。

「何かに使えそうな地面」を保持するため、許容建蔽率ぎりぎり一杯の平屋建てボリュームを鉄骨柱で支持して宙に浮かせる形式を採用した。すると余剰の少ない居住スペースの下に、使い道を保留したままの大きなピロティ状のスペース「下庭」が生まれた。

一般に、住宅を取り囲むように用意された空地は「外構」と呼ばれることが多い。必要なものが必要に応じて置かれていて、「何かあったらその時に対応すればいいや。」に備えている。翻って「下庭」はたしかに庭ではあるが、同時にこの住まいにとって、日々の生活における様々な不足を補い微調整するためのバックアップスペースであり、つまり「大きな外構」としてもはたらいている。手始めに建物の出入口に至る動線と駐車スペースのみを設定した。自転車はどこに置いてもよい。その他のことはその時になったら考えればよいのである。

この「住まい」と「外構」の図式を建築内部に持ち込むことで設計はさらに展開する。2,730mmグリッドに沿って立つ木柱の上部に廻る小屋梁を境に断面的に2つのゾーンを定めた。FL~小屋梁の間は生活のためのゾーンである。間仕切り壁の設置は最小限にとどめ、かわりに柱間にフルハイトの3枚引戸を設置することで可変的に使える住空間としている。そして人の目線の少し上、梁上~天井の間は電気と設備のためのゾーンとした。通常は隠蔽されることも多い配線・配管ルートであるが、「生活を支える舞台裏である」という意味でこれを「もうひとつの外構」と位置付け、すべて現しで納めている。断面構成に対応するように小屋梁上部にハイサイド窓を配することで、全ての仕組みが見える抜けの良いスペースとなった。

コンパクトな一室空間はしかし、上下に横たわる2つの「外構」とコミュニケーションをとりながら日々つくり変えられ、自在に伸び縮みを続けるだろう。それは住まいにとって、終わらない進化のプロセスである。

© 2025 Ikehara Architect & Associates  All Rights Reserved.

Photo by Takeshi Yamagishi / Takuya Seki

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